こんな方におすすめ
- 実験レポートの背景の書き方を知りたい方
- 背景で毎回つまずいてしまう方
- 実験レポートの背景の例を参考にしたい方
本記事の内容
- 実験レポートにおける背景(緒言)とは?
- 背景を書く上でのポイント
- 背景の書き方
- 背景の例を紹介
実験レポートで最も悩まされるのがおそらく背景。理系大学生にとって,背景のような長い文章を書くのは非常に苦だと思います。
しかし,ポイントを押さえていけば必ずうまく書けるようになります。
ページの最後に背景のテンプレートを用意しているので,ぜひ最後までご覧ください!
僕も一番苦手な項目ですが,一緒に頑張っていきましょう!
Contents
実験レポートにおける背景(緒言)とは?
背景の書き方を押さえていく前に,まずは背景(もしくは緒言とも)とは何なのかを確認しておく必要があります。
背景(緒言)とは,英語では「introduction」と呼ばれる項目で,要するに,導入部分です。
実験を行うということは少なくとも何か目的があるはずです。
つまり,実験を行う意義(なぜこの実験を行ったのか)や社会情勢などを踏まえて実験が行われることになります。
ここで,学生実験の根本的な目的を確認すると,
- 実験課題の理解
- (実験)レポートの書き方の習得
- 論理的思考力の強化
が挙げられます。
しかし,これらをレポートに記述してしまうと,減点になります。
あくまでも,建前上の実験目的はこれらの根本的な目的とは異なるということを覚えておきましょう。
背景を書く上でのポイント
背景を書く上でまず意識しなければいけないのが,
- 逆三角形を意識する
- 関係のないことで文章を埋めない
ということです。
ひとつずつ見ていきましょう。
逆三角形を意識する
背景を書くときにまず意識すべきは,「逆三角形」です。
どういうことかというと,まず背景の前半部分で,身近にあることや社会情勢などある程度広い分野について書き始め,後半になるにつれて,対象分野を絞っていき,本実験の目的につないでいくイメージです。
まずは,実験に関するある程度抽象的な事項Aを書き,次に,Aよりも具体的な事項Bを持ってきます。
そして,自然な流れで本実験の目的につなげていきます。
関係のないことで文章を埋めない
よくありがちなのが,上で挙げた逆三角形の上2つを形成する際,実験項目とはほとんど関係ない事項を載せてしまう方がいます。
文章を埋めることに必死になってしまうと,実験とは関係のないことまで書いてしまう可能性が高まるので,注意しましょう。
あくまでも,実験に直接関係することだけ記載するように心がけましょう。
背景の書き方
では,背景の書き方に移っていきます。
具体的に,背景に何を書けばよいかということになってくるのですが,それは
- なぜこの実験を行う必要があるのか?(未解決問題)
- 現在の社会情勢
- 歴史を振り返る
- 「身のまわりにあふれている」ワード
の4つです。
なぜこの実験を行う必要があるのか?(未解決問題)
これは,なぜこの実験を行うのか?という実験の意義を記述するということです。
そもそも,人間がなぜ研究をするのかというと,それは世の中にある未解決問題を解決し,より良い世の中を創っていくためですよね。
ですから,「この実験を行うことで,世の中のこんな未解決問題を解決できるかもしれない」という旨の文章を書くといいでしょう。
現在の社会情勢
現在の社会情勢について言及するのもいいでしょう。
例えば
- 現在の社会情勢は〇〇な状況であり,この〇〇な状況を☐☐の知見を利用することにより,△△な状況に変えることができる
ウイルスについての実験なら,「コロナウイルスで世界がパニックになっているから,コロナウイルスに効くワクチンを開発する必要がある」とといった感じですね。
歴史を振り返る
逆に,歴史を振り返ってみて過去にこんな研究や実験が行われているという事実に言及するのもいいでしょう。
例えば
- 数千年前にこんな技術があった
- 先行研究でこういう実験がある
「身のまわりにあふれている」ワード
「私たちの身の回りにこういう製品は身近にあるよね。その製品には,こういう技術が使われているんだよ。」という書き方です。
これは最も背景の書き出しに使えると個人的には思います。
迷ったら・・・
- 「私たちの身の回りには~」と書き出してみる
ぜひ背景の書き方で迷ったら「私たちの身の回りには~がある」と書き出してみてください!すらすら書けると思いますよ。
背景の例の紹介(テンプレート)
①上記の4つのポイントと②逆三角形を意識して,背景を書いていく必要があります。
例を考えてみたので,参考にしてみてください。
以下の例は,「アルミニウム合金の時効硬化の実験」です。
背景の例(テンプレート)
1. 背景
私たちの身の回りにある構造物や工場などで用いられる機械は,純金属で作られていることは少なく,合金がほとんどである。【 ←「私たちの身の回りには~」 】合金に含まれる金属の組織,金属含有率,加工法など様々な側面が起因し,合金の物性を様々に変化させる。そのため,合金の用途に応じて機械的特性を調整する必要があり,その物性を把握しておくことも求められる。【 実験の意義 】合金の中でも代表的なものがアルミニウム合金である。【 一般的な合金からアルミニウム合金に対象を絞る 】アルミニウム合金は,添加合金元素の種類やその含有率,熱処理の仕方によって、分類される。たとえば,熱処理で区分すると,加工硬化・時効硬化・鋳造硬化に分類され,用途で区分すると,展伸用・鋳造用に分類される[1]。純度99 %以上である1000系アルミニウム合金は,強度が低いが,加工性・表面処理性が優れ、耐食性がよく,Al-Mg-Si系合金の7000系に含まれる超々ジュラルミン7075はアルミニウム合金中最強の強度を誇る[1]。今回の実験で取り扱ったアルミニウム合金2017はAl-Cu系合金の2000系に属し,強度が高く,機械的特性や切削性に優れている合金である[1]。アルミニウム合金は軽量でかつ炭素鋼に匹敵する強度を持つため,航空機や鉄道車両に用いられている[1][3]。このように,添加元素・加工方法で特性が様々に変化する。
合金の特性向上において特に重要になってくるのが,合金の強化である。【 対象を絞る 】アルミニウム合金をはじめとした合金の強化方法はいくつか存在するが,そのひとつに,析出強化がある。【 さらに絞る 】これは,母相(アルミニウム合金2017の場合,α- Al固溶体単相)中に第2相粒子(アルミニウム合金2017の場合,GPゾーンやθ'-Al2Cu準安定相,θ-Al2Cu平衡相)などが析出することで,強化されることをいう[2]。析出強化には,溶体化処理と時効の2段階の熱処理がある。溶体化処理は,合金を単相状態まで加熱し,急冷(焼入れ)を行うことによって過飽和固溶体を形成させるために行うものである[2]。時効は,再び温度を上昇させる(焼戻し)ことで過飽和固溶体から析出物を析出させることをいう[2]。時効により過飽和固溶体から析出物が析出し,硬度が増すことを時効硬化と呼ぶ。
上記のように,2つの過程を踏むことによって,硬度が増すことを述べた。本実験では,アルミニウム合金2017を用いて,溶体化処理,そして時効という2段階の熱処理を行うことによって,実際にその合金の硬度が上昇するのか(時効硬化)を確かめるために行ったものである。【 最後に本実験の目的 】
以下に上記のWordファイルをダウンロードいただけます。
まとめ~逆三角形を意識しよう~
このように,逆三角形を意識し,言及する対象分野を徐々に絞っていくことがコツです。
慣れるまでは,レポートの中で最も書きにくく苦戦するところではあると思いますが,一緒に慣れていきましょう!