こんな方におすすめ
- レポートの考察の書き方を知りたい方
- 考察がうまく書けない方
- 考察でもっと点数を稼ぎたい方
本記事の内容
- これは考察ではない
- 考察の書き方
学生実験で最も配点が高いのが考察。
初めは何を書いていいかわからないものです。
しかし,ある程度のパターンがあるのでコツをつかんでいけば,意外とスラスラ書けたりします。
この記事を読めば,考察を書くのが苦でなくなると思います。
Contents
これは考察ではない
まずは,考察とは何かを考えていきましょう。
よく勘違いしやすいものに,
- 感想
- 反省
があります。
感想は考察ではない
実験に対する自分の感想は,考察に書くことではありません。
- 「CFRP積層板が思っていたよりも曲がってびっくりした」
- 「スペクトルがきれいに観察できて良かった」
- 「酢酸を水酸化ナトリウム水溶液に滴定するのが難しかった」
などは感想であって,考察ではありませんね。
反省は考察ではない
実験に対する反省も考察に書くことではありません。
- 「酢酸を水酸化ナトリウム水溶液に滴定するときにこぼしてしまったので,次はこぼさずに滴定を行いたい」
- 「スペクトル線をn=3までしか観察しなかったが,n=4まで観察すればよかった」
- 「CFRP積層板をもっと丁寧に作成すればよかった」
などはただの反省であって,考察には不適切です。
しかし,これらの反省を活かして誤差を減らすといった内容について記述するのはありだと思います。
では考察とは?
では,考察に何を書けばよいのでしょうか?
考察には,実験で得られた結果に対して,科学的根拠をもって,論理的に理由を記述すると押さえておきましょう。
大事なのは,
- 科学的根拠
- 論理的
というポイントです。
まず,科学的根拠というところですが,レポートは私見を含んではいけません。
- 「なんとなくそう思ったから」
- 「先輩がそう言っていたから」
などは,科学的根拠に基づいていませんよね。
科学的根拠というのは,
- 「〇〇という公式があるから」
- 「先行研究で〇〇ということが一般的に知られているから」
というものを指します。
「なんとなく」や「先輩・友人」というのは科学的根拠ではありません。
もう一つは,論理的というポイントです。
レポートは論理的に記述する必要があります。
つまり,
「Aだから」⇒「Bである」⇒「よって,Cである」
という流れで書かなければいけないということです。
これは,「前提条件を無視してはいけない」と言い換えてもいいかもしれません。
例えば,数学の公式にロピタルの定理というのがありますが,どんな形でもとりあえず微分すればいいやと考えている人がいますが,これは,極限が不定形の場合にのみ成り立つ定理です。
このように,いくら科学的根拠を提示しても,論理的ではない文章はレポートではNGです。
また,
「Aだから」⇒「Cである」
といったように,「Bである」という論理が飛躍している記述も良くありません。
例えば,「雨の日である」⇒「頭が痛くなる」というのは論理的に飛躍しています。
飛躍を埋めるには,「雨の日である」⇒「気象変化に対応して自律神経が乱れる*」⇒「頭痛になる」といったように,「Bである」という根拠を挟んであげる必要があるということです。(*https://jp.rohto.com/learn-more/pick-up/tenkizutsu/)
日常生活を例にしましたが,レポートでも同じことが言えます。
考察の書き方
では,前置きが長くなってしまいましたが,考察の具体的な書き方をご紹介します。
考察のネタと名付けて,考察には何を書いていけばよいのかを説明していきます。
考察のネタ
- 結果に対して「なぜ?」を記述する
- 参考文献との比較
- 理論値との比較
- 誤差
ひとつずつ見ていきましょう!
結果に対して「なぜ?」を記述する
これが最も考察においては書きやすいポイントです。
結果というのは,実験を行ったことで得られた客観的なデータや情報のことです。
これらに対して,考察で「なぜその結果になったのか」を記述するのです。
例えば,結果で「xとyが比例した」と得られたら,「なぜ,xとyが比例するのか?」というのを科学的根拠に基づいて考えるのです。
先述したとおり,「科学的根拠に基づいて」というのがポイントで,「なんとなく」というのは無しです。
「〇〇ということが知られているから(科学的根拠)」⇒「xとyが比例する(結果)と考えられる」と記述するのです。
考察を記述する際の文章表現として,ある程度決まった表現があるので,以下の記事を参考してみてください。
-
レポートで用いるべき表現例一覧~項目別~
続きを見る
文献値との比較
次に紹介するのは,得られた実験結果と参考文献を比較するということです。
このとき,書籍や論文から文献を掘り出し,自分の実験で得られた実験値と文献値の大小を比較すれば,OKです。
この際に気を付けるべきポイントは,2つあります。1つ目は大小を比較した結果,実験値と文献値がずれていた場合,なぜずれたのかを記述する必要がある,もう1つは,文献値を参考にする際,その文献値はどのような実験方法で得られた値なのかを確認するということです。
実験値と文献値がなぜズレたか
大小を比較して,「実験値の方が大きかった」と言っただけでは,何の意味もありません。
ここで,なぜ実験値と文献値でずれが生じたのかを考察します。主な理由は実験方法に誤りはなかったかが考えられます。
実験方法に誤りはなかったかということに関しては,(実際に行った)実験方法(試薬の滴定量や装置のパラメータや反応時間などなど)は正しかったのか。間違っていたのであれば,どのように実験すればうまくいったのか(理論値に近づくのか)を,実験を思い返しながら考える必要があるでしょう。

学生実験では,実験方法は最適化されていることが多いので,実験テキストに書かれた方法に誤りがあることは少なく,実際にすべての条件をそのまま行えば,成功することが多いです。
逆に,実験値が文献値と比較的近い値になった場合は,「実験値と文献値が比較的近い値になった」という旨の文章を書けばいいと思います。
個人的には,実験値と文献値が比較的近い値なった理由は書く必要はないと思います。
その文献値の実験方法を確認する
もう1つのポイントは,文献値を参考にする際,その文献値はどのような実験方法で得られた値なのかを確認するということです。
なぜかというと,同じ値でも実験方法が異なれば,異なる数値が算出される可能性があるからです。
例えば,Aという物質を合成したい場合,aとbの2通りの方法が知られているとします。学生実験で行った合成方法は,aでした。文献値と比較するために,書籍から物質Aに関する合成法bを見つけ,比較した。すると,実験値(合成法a)と文献値(合成法b)では,20%の誤差があった。
上の例では,同じ物質Aでも合成の仕方が変われば,値が変わることを意味しています。こういったことは往々にしてあります。よって,合成法aの文献値を探す必要があるのです。
卒業研究になってくると,逆に,自分の実験を合成法bに合わせるという方法もありますが,学生実験では,実験方法を変更して行うことはまずないと思います。
文献値と比較する際は,自分の実験方法と文献の実験方法が同じであることを確認しましょう。

もし,同じ実験方法の文献値が無ければ,異なる実験方法の文献値と比較した上で,その旨をレポートに記述するといいでしょう。
理論値との比較
また,考察事項として,理論値と比較してみるのもいいと思います。
理論値とは,この実験方法を実行すると理論計算上はこれだけの量が得られるはずという値です。
酢酸エチルの合成を例に示してみます。

酢酸100 mmol,エタノール500 mmolを用意し合成した場合,理論的には100 mmolの酢酸エチルが生成することがわかります。
この100 mmolというのが理論値です。
しかし,実際に実験を行ったら,酢酸エチルは80 mmolだったとすると,この80 mmolは実験値になります。
この100 mmolと80 mmolを比較し,なぜ理論値よりも少ないのかを実験を思い出しながら考察すればOKです。考察方法としては,先ほど「文献値との比較」で説明した方法と全く同じです。
また,理論値との比較においては,前提条件を無視している可能性はないか,なども挙げられます。
例えば,物質の吸光度を測定するランバート・ベールの法則があります。これは希薄溶液にのみ適用される法則であり,濃度の高い溶液では適用できません。この法則は,溶液の濃度と吸光度が直線関係(比例する)というものです。例えば,実験である溶液の吸光度を測定し,溶液濃度と吸光度の関係をプロットすると,直線関係にならず,曲線になってしまった。この原因は,「ランバート・ベールの法則が希薄溶液の場合にのみ成り立つこと」を無視してしまったことが挙げられます。
このように,その理論値を基にした法則の前提条件を疎かにしてしまうケースは多々あるので,注意しましょう。
誤差
上記,「文献値との比較」,「理論値との比較」の中で,具体的な比較の仕方に「誤差を考える」というものがあります。
誤差というのは,比較するデータ同士がどれだけずれているかを表す数値です。
誤差にはいろいろ種類がありますが,単純な比較という意味では,相対誤差を求めるのがいいと思います。
相対誤差は
相対誤差=(実験値―理論値) / 理論値
で求めることができます。
先ほどの酢酸エチルの合成を例にしてみると,相対誤差は,
相対誤差=(80 mmol – 100 mmol) / 100 mmol = 0.2
となるので,相対誤差は20%ということになります。ところが,この相対誤差20%というのは,大きいのか小さいのかよくわからないですよね。ですから,この相対誤差20%が大きいか小さいかの議論は必要ありません。大事なのは,その相対誤差をいかにして縮めていくかであり,それを自分なりに考える(考察する)ことです。

もし,大きい小さいの議論をするのであれば,酢酸エチルの例でいえば,複数回合成をして(例えば3回),3回ともの相対誤差を算出し,それらを比較するというのはありだと思います。
まとめ
今回は,考察の書き方についてご紹介してきました。
復習しておきましょう。
考察のネタ
- 結果に対して「なぜ?」を記述する
- 参考文献との比較
- 理論値との比較
- 誤差
でした。
考察は,実験レポートで一番の頑張り所であるので,ぜひ点数を稼いでもらいたいです!